初めての看取り期、特養で最期まで暮らすには?完全ガイド【2026年最新】

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看取り介護とは — 特養で最期まで暮らすということ {#section-overview}

看取り介護の定義

看取り介護とは、医師が「回復の見込みがない」と診断した方に対して、痛みや苦しみをできる限り取り除きながら、最期までその人らしく穏やかに過ごせるよう支援するケアのことです。積極的な延命治療(人工呼吸器の装着、経管栄養の開始など)を行わないことと同一視されがちですが、正確には異なります。どこまでの医療的処置を望むかは、本人の意思(事前に示していた希望や価値観)と家族の意向をもとに、医師・看護師・介護職員が話し合いながら個別に決めていくプロセスそのものが看取り介護です。

介護保険制度上、看取り介護は特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)で提供され、それぞれに「看取り介護加算」または「ターミナルケア加算」という介護報酬上の評価が設けられています。本記事では、施設看取りの中でも利用者数が最も多い特養を中心に解説します。特養そのものの費用・入所条件・選び方の基本は、姉妹記事の特別養護老人ホーム(特養)完全ガイドで詳しく説明していますので、まだ特養そのものを検討中の方はあわせてご覧ください。

なぜ「特養での看取り」が増えているのか

厚生労働省の人口動態統計によれば、老人ホーム等の施設で最期を迎える方の割合は、2000年代初頭には全体の数%に満たない水準でしたが、2020年代に入り約15%前後まで上昇してきました(出典: 厚生労働省 人口動態統計。年ごとの正確な数値は年次によって変動するため、最新の公表資料をご確認ください)。背景には、核家族化により在宅で24時間の介護・医療的ケアを担う家族が減っていること、病院のベッド数が抑制され「治療の必要がなくなった患者は退院を求められる」実態があること、そして特養自体が「終の棲家」として看取りまで支える役割を担うようになってきたことが挙げられます。

特養は原則として要介護3以上の方が入所対象となる施設です(2015年4月の介護保険法改正による。介護保険法第8条第27項・老人福祉法第20条の5にもとづく施設類型)。入所時点ですでに重度の要介護状態にある方が多いため、入所後の数年〜十数年のうちに看取り期を迎える入所者は少なくありません。つまり「特養に入所する」ことは、多くの家族にとって将来的な看取りの場所を選ぶことと表裏一体の意思決定になっているのが実情です。

例えば、要介護4で特養に入所したBさん(85歳・女性)のケースでは、入所から3年後に誤嚥性肺炎を繰り返すようになり、主治医から「積極的な治療より苦痛の緩和を優先する時期」と説明を受けました。家族は当初「病院に移して治療を続けるべきか」と悩みましたが、本人が以前から「延命のための管につながれるより、住み慣れた施設で穏やかに過ごしたい」と話していたことを思い出し、施設の看取り介護計画に同意。その後は看護師が痛みの管理を行い、家族は仕事の合間に面会に通いながら、施設で最期を迎えました。

家族が最初に知っておくべき3つのこと

  1. 看取りは「今すぐ決める」ものではない — 看取り介護計画への同意は、状態の急変ではなく多くの場合、医師の「回復の見込みがない」という判断がなされた段階で提案されます。突然その日に決断を迫られるわけではありません。
  2. 同意した後も方針は変更できる — 一度看取り介護に同意しても、本人・家族の意向が変われば病院搬送や治療方針の見直しをいつでも申し出ることができます。
  3. 施設によって対応できる体制に差がある — すべての特養が看取りに対応しているわけではありません。次の章で、対応可能な施設をどう見分けるかを具体的に解説します。

「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」という考え方

近年、医療・介護の現場では「人生会議」とも呼ばれるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)という考え方が広がっています。これは、本人が元気なうちから「もしものときにどんな医療・ケアを望むか」を、家族や医療・介護の専門職と繰り返し話し合っておく取り組みです。認知症が進んでからでは本人の意思確認が難しくなるため、特養への入所を機に、あるいは入所後の面会の際に、少しずつ話題にしておくことが望ましいとされています。多くの特養では、入所時の面談やケアプランの見直しのタイミングで、本人・家族の意向を確認する機会を設けています。「まだ先の話」と感じても、ケアマネジャーや生活相談員に「将来的な希望も相談したい」と伝えておくだけで、いざというときの話し合いがスムーズになります。

看取り期の家族の関わり方 — 何をすればいいか分からないとき

看取り期に入ると、多くの家族が「何をしてあげればいいのか分からない」という戸惑いを感じます。医療的なケアは看護師・介護職員に任せてよい部分がほとんどですが、家族にしかできない関わり方もあります。例えば、本人の耳元で日常の出来事を話しかける、手を握る、好きだった音楽を小さな音量で流す、思い出の写真や品物を枕元に置くといったことです。意識がはっきりしない状態でも、聴覚は比較的最後まで保たれるとされており、声かけには意味があるといわれています。「何か特別なことをしなければ」と気負う必要はなく、いつも通りに接すること自体が本人にとっての安心につながります。分からないことがあれば、そばにいる看護師・介護職員に「今、何をしてあげたらいいですか」と率直に聞いてみてください。

特養が担う役割の変化

かつて特養は「介護を受けながら生活する場」という位置づけが中心でしたが、在宅での看取りを支える家族の減少や、医療機関の在院日数短縮の流れを受けて、現在では「人生の最終段階まで支える場」としての役割も強く求められるようになっています。厚生労働省が2024年度介護報酬改定で看取り介護加算の単位数を見直したのも、こうした施設の役割の変化を制度面で後押しする狙いがあります。施設を選ぶ際は、日常のケアの質だけでなく、「この施設なら最期まで任せられるか」という視点も、選択肢の一つとして持っておくとよいでしょう。

「看取りができる特養」の見分け方 — 体制基準とチェックリスト {#section-check}

すべての特養が看取りに対応しているわけではない

特養だからといって、必ず看取りまで対応してもらえるとは限りません。看取り対応の体制が整っていない施設では、看取り期に入ったタイミングで「これ以上は対応が難しいため、他の医療機関への転院をお願いしたい」と言われるケースもあります。入所前の施設選びの段階、あるいは今すでに入所している場合でも早い段階で、その施設が看取りに対応できる体制かどうかを確認しておくことが重要です。

看取り対応施設に求められる4つの体制基準

介護報酬上「看取り介護加算」を算定するためには、厚生労働省が定める人員・運営基準を満たす必要があります。主な要件は次の4つです。

基準 内容
① 看護体制 常勤の看護師を1名以上配置し、24時間連絡できる体制を確保していること(施設内配置または医療機関との連携による対応を含む)
② 看取り指針の整備 施設として「看取りに関する指針」を定め、入所時・状態変化時に本人・家族へ説明し、同意を得ていること
③ 職員研修 看取りに関する職員研修を定期的に実施していること
④ 療養環境への配慮 看取りを行う際に、個室または静養室が利用できるよう配慮すること

これに加えて、看取り介護加算Ⅱを算定する施設は、配置医師または連携する医師と24時間体制で連絡が取れ、施設内で看取りまで対応できる、より手厚い医療連携体制を整えています。加算Ⅰ・Ⅱの違いは次の章で詳しく解説します。

施設見学・入所相談で確認したい7つの質問

見学や相談の際は、パンフレットだけではわからない運用の実態を、遠慮せず直接質問することが大切です。

  1. 「看取り介護加算を算定していますか。ⅠですかⅡですか」
  2. 「看取り指針を見せていただけますか」
  3. 「夜間、看護師は施設にいますか。それとも呼び出し対応ですか」
  4. 「看取り期に入ったら、個室に移れますか」
  5. 「面会のルールは看取り期でどう変わりますか」
  6. 「配置医師や連携医療機関は、夜間・休日も対応してもらえますか」
  7. 「これまでの看取り実績(年間何名程度)はどのくらいですか」

これらの質問への回答が具体的で、施設の職員がよどみなく説明できる場合は、看取りへの体制が組織として定着している可能性が高いといえます。逆に「その都度検討します」「あまり実績がありません」という回答が続く場合は、慎重に検討したほうがよいでしょう。

見学時に「雰囲気」から読み取れること

体制基準の確認に加えて、見学時には施設全体の雰囲気にも目を向けてみてください。職員が入所者に対してどのような言葉づかいで接しているか、忙しい時間帯でも入所者一人ひとりに目を配れているか、居室や共用スペースが清潔に保たれているか、静かに過ごせる個室や談話スペースがあるか、といった点は、パンフレットの記載だけでは分かりません。可能であれば、食事の時間帯や午後のゆったりした時間帯など、複数のタイミングで見学することをおすすめします。看取りへの体制が整っている施設は、日常のケアの丁寧さにもその姿勢が表れていることが多いものです。

介護サービス情報公表システムでの確認方法

各施設の看取り介護加算の算定状況は、都道府県が運営する「介護サービス情報公表システム」で公表されています。施設名または地域名で検索し、「サービス内容」または「加算状況」の欄を確認することで、見学前にある程度の目星をつけることができます。ただし公表情報の更新頻度は施設・自治体により異なるため、最終確認は必ず施設への直接の問い合わせで行ってください。

今すでに入所している場合の確認タイミング

「まだ看取りの話をするのは早い」と感じる家族も多いですが、入所後の早い段階(できれば入所時の説明の際)に、施設の看取り対応方針を確認しておくことをおすすめします。実際に容体が悪化してから初めて聞くよりも、落ち着いた状態のときに確認しておくほうが、いざというときに冷静な判断がしやすくなります。地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すれば、施設側との話し合いに同席してもらうことも可能です。地域包括支援センターの役割については地域包括支援センターの使い方ガイドで詳しく解説しています。

施設タイプ別の看取り対応レベルの目安

同じ「施設で最期を迎える」といっても、施設の種類によって医療連携の強さや環境は異なります。検討中の施設が複数のタイプにまたがる場合は、次の比較を参考にしてください。

施設タイプ 看取り体制の傾向 向いているケース
特養(看取り介護加算Ⅱ算定) 常勤看護師+24時間医師連携。施設内で医療的対応まで完結しやすい 医療的な管理がある程度必要でも、施設で最期まで過ごしたい方
特養(看取り介護加算Ⅰのみ) 基本体制は整うが、医療連携は加算Ⅱより限定的 比較的安定した状態で看取り期に入る方
介護老人保健施設(老健) 医師常勤で医療対応力は高いが、在宅復帰前提のため看取り実績は施設差が大きい 医療的な管理を重視するが、在宅復帰の可能性も残したい方
グループホーム 看取り介護加算Ⅰのみ。医療連携は施設ごとに差が大きい 認知症があり、住み慣れた小規模な環境を重視する方
在宅(訪問診療・訪問看護と連携) 家族の負担は最も大きいが、自宅で過ごせる 家族の介護力・医療資源が確保でき、自宅を強く希望する方

看取りを断られた・対応が難しいと言われた場合

「これ以上は施設での対応が難しい」と説明され、病院や他の施設への転院を提案されるケースもあります。これは施設の体制上の限界(夜間の看護師不在、医療連携先の対応可否など)によるもので、必ずしも施設側の落ち度ではありません。このような場合は、まずケアマネジャーに相談し、次の選択肢を整理してもらいましょう。

  • 医療連携がより手厚い他の特養・介護医療院への転所
  • 訪問診療・訪問看護を利用した在宅への切り替え
  • 一時的な入院を経て、状態が落ち着いた後に再度施設での看取りを検討する

いずれの場合も、本人・家族の希望を軸に、ケアマネジャーや地域包括支援センターと相談しながら決めることが大切です。

看取り介護加算とは — 単位数・算定要件・ⅠとⅡの違い {#section-kasan}

看取り介護加算の位置づけ

看取り介護加算は、施設が看取り期の入所者に対して手厚い医療・看護・介護体制で対応した場合に、介護報酬に上乗せされる加算です。2024年度の介護報酬改定でも見直しが行われており、死亡日に近づくほど段階的に高い単位数が設定されている点が特徴です。これは、看取り期の後半になるほど医療的なケアや観察の頻度が増え、職員の負担も大きくなることを反映した設計です。

看取り介護加算Ⅰ・Ⅱの単位数

死亡日からの日数 加算Ⅰ 加算Ⅱ
死亡日以前31日〜45日 72単位/日 72単位/日
死亡日以前4日〜30日 144単位/日 144単位/日
死亡日の前日・前々日 680単位/日 780単位/日
死亡日 1,280単位 1,580単位

最大45日間算定した場合、加算Ⅰの合計は7,608単位、加算Ⅱは8,108単位になります。介護保険では1単位あたりの単価(地域単価)が地域区分によって10円〜11.40円の範囲で異なるため、実際の金額はお住まいの地域によって変わります。仮に1単位10円で換算すると、死亡日だけで加算Ⅰは12,800円、加算Ⅱは15,800円が介護報酬に上乗せされる計算です(このうち利用者が負担するのは所得に応じた1〜3割分です)。

加算Ⅰと加算Ⅱの違い

加算Ⅰは、前章で紹介した「常勤看護師1名以上の配置」「24時間連絡体制」「看取り指針」「職員研修」「個室・静養室への配慮」という基本的な体制を満たす施設が算定できます。

加算Ⅱは、これに加えて、配置医師または連携する医師(オンコール体制を含む)と24時間体制で連携でき、施設内で医療的な対応を含めた看取りまで完結できる、より手厚い医療連携体制を整えた施設のみが算定できる上位区分です。加算Ⅱを算定している施設は、急変時に病院搬送に頼らず施設内で対応できる可能性が高く、「最期まで住み慣れた場所で過ごしたい」という希望をより実現しやすいといえます。

算定に必要な本人・家族の意思決定プロセス

看取り介護加算は、施設側の体制が整っているだけでは算定できません。次の条件を満たす必要があります。

  • 医師が「回復の見込みがない」と診断していること
  • 医師から本人・家族へ適切な情報提供と説明が行われていること
  • 医療・介護職と十分に話し合った上で、本人または家族の意思決定によって看取り介護を行うことが決まっていること
  • その内容が「看取り介護計画」として文書化され、同意を得ていること

つまり看取り介護加算は、施設が一方的に始めるものではなく、家族の意思決定が制度上の前提条件になっています。説明を受ける際は、疑問点をその場で解消し、納得したうえで同意することが大切です。

老健・グループホームの看取り介護加算との違い

介護老人保健施設(老健)や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)にも、それぞれ看取りに関する加算が設けられています。老健は本来「在宅復帰」を目的とした施設のため、看取り体制の手厚さは施設によって差が大きく、事前に個別の確認が必要です。老健全体の特徴や退所後の選択肢は介護老人保健施設(老健)完全ガイドで解説しています。グループホームは看取り介護加算Ⅰのみが設定されており、医療連携の強さは施設ごとの差が大きい点に留意してください。なお介護医療院では「ターミナルケア加算」という別名称の加算が設けられており、看取り介護加算とは算定要件・単位数の体系が異なります。介護医療院を検討している場合は、施設に直接ターミナルケア加算の算定状況を確認してください。

「1単位=10円」ではない地域単価のしくみ

介護報酬の単位数を実際の金額に換算する際、多くの解説記事では簡略化のために「1単位=10円」として計算しますが、正確には地域ごとに定められた「地域単価(1単位あたりの単価)」を使います。地域単価はサービス種類や地域区分(1級地〜7級地・その他)によって10.00円〜11.40円の範囲で異なり、都市部ほど高く設定される傾向があります。そのため、本記事の費用試算はあくまで目安であり、正確な金額は施設のケアプラン担当者や利用明細で確認してください。

費用の目安 — 看取り期にかかるお金と負担軽減制度 {#section-cost}

特養の基本的な月額費用のおさらい

看取り期の費用増加を理解する前提として、特養の月額費用の基本構成を確認しておきましょう。特養の費用は「介護サービス費(1〜3割負担)」「居住費」「食費」「日常生活費」の合計で決まります。居住費・食費は所得に応じた「特定入所者介護サービス費(補足給付)」により軽減される仕組みがあります。特養全体の費用の詳しい内訳・シミュレーションは特養完全ガイドの費用セクションをご覧ください。

補足給付(食費・居住費)の負担限度額

所得が低い方向けに、食費・居住費には所得段階に応じた負担限度額(1日あたり)が設けられています。2026年7月時点の基準は以下のとおりです(多床室の場合)。

所得段階 食費(施設入所・日額) 居住費(多床室・日額)
第1段階 300円 0円
第2段階 390円 430円
第3段階① 650円 430円
第3段階② 1,360円 430円

※従来型個室・ユニット型個室・ユニット型準個室はそれぞれ別の限度額(多床室より高い)が設定されています。詳細は負担限度額認定証の申請ガイドで確認してください。

重要な変更予定: 厚生労働省の発表(介護保険最新情報Vol.1481ほか)によると、2026年8月から補足給付の基準が見直され、第3段階①・②に該当する方の食費が1日30円〜60円程度、第3段階②の居住費(一部の施設類型を除く)が1日100円程度、それぞれ引き上げられる予定です。あわせて所得段階を判定する基準額(「年金収入金額+合計所得金額」)が80.9万円から82.65万円に見直されます。すでに入所中の方・入所を検討中の方は、8月以降の負担限度額認定証の再判定通知を必ず確認してください。

看取り期に増える費用

看取り期に入ると、介護報酬に看取り介護加算が上乗せされるため、利用者負担(1〜3割)もその分増加します。目安は以下のとおりです(1単位10円・1割負担で計算した概算。実際は地域単価・所得に応じた負担割合により変動します)。

時期 加算単位(Ⅰ) 1割負担額の目安
死亡日以前31〜45日 72単位/日 約72円/日
死亡日以前4〜30日 144単位/日 約144円/日
死亡日前日・前々日 680単位/日 約680円/日
死亡日 1,280単位 約1,280円

最大45日間看取り介護加算Ⅰを算定した場合の利用者負担増は、1割負担であれば合計で概ね7,000円台(地域単価により変動)です。特養の月額費用全体(介護サービス費+居住費+食費で月10万円前後が一般的な目安)と比べると、看取り期による負担増は限定的な範囲にとどまるケースが多いといえます。

費用シミュレーション例

例えば、多床室に入所中で所得段階が第3段階①(1割負担)のCさん(要介護4、90歳)の場合を考えてみます。看取り期に入る前の月額費用は、介護サービス費(1割負担・約2.5万円)、食費(650円×30日=1.95万円)、居住費(430円×30日=1.29万円)、日常生活費(理美容・おむつ代など約1万円)を合計して、月額7.7万円前後が目安です。看取り期に入り、加算Ⅰを45日間算定した場合、上乗せされる自己負担は合計で概ね7,000円台(1単位10円換算)となり、月あたりの負担増は数千円〜1万円弱にとどまるケースが一般的です。金額は地域単価・所得段階・居室タイプによって変動するため、正確な試算は施設の相談員に確認してください。

費用を抑えるためにできること

  1. 負担限度額認定証の申請 — 所得が低い方は、市区町村に申請することで食費・居住費の軽減が受けられます。まだ申請していない場合は早めに手続きしましょう。
  2. 高額介護サービス費の申請 — 1か月の介護サービス費の自己負担が上限額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
  3. 世帯分離の検討 — 世帯の所得状況によっては、世帯分離によって所得段階が下がり、負担限度額が軽減される場合があります。ただし国民健康保険料など他の制度への影響もあるため、慎重な検討が必要です。
  4. 医療費控除の活用 — 特別養護老人ホームの利用料のうち、介護費・食費・居住費の自己負担額は、国税庁の定めにより2分の1の額が医療費控除の対象になります(国税庁タックスアンサーNo.1125)。確定申告の時期に領収書をまとめて保管しておき、控除の対象になるかどうかを税務署または税理士に確認しましょう。
  5. 高額医療合算介護サービス費の確認 — 同じ世帯で医療保険と介護保険の自己負担が両方とも発生している場合、1年間の合計額が基準を超えると、超過分が払い戻される「高額医療合算介護サービス費」という制度もあります。持病の治療と施設サービスの両方で負担がある場合は、市区町村の窓口で該当するか確認してみてください。

意思決定から最期まで — 実際の流れ {#section-flow}

全体の流れ

看取り介護は、ある日突然始まるものではなく、いくつかの段階を経て進んでいきます。

  1. 状態の変化への気づき — 食事量の低下、覚醒時間の減少、感染症の繰り返しなど、施設職員が変化に気づき、家族へ報告します。
  2. 医師の診断 — 主治医(配置医または協力医療機関の医師)が「回復の見込みがない」と判断します。
  3. 本人・家族への説明 — 医師・看護師・生活相談員・ケアマネジャーが同席し、現状と今後の見通し、選択肢(積極的治療の継続か、看取り介護への移行か)を説明します。
  4. 意思決定 — 本人の意思(事前の意思表示があればそれを尊重)と家族の意向をすり合わせ、方針を決めます。すぐに決められない場合は、時間をかけて話し合うことも可能です。
  5. 看取り介護計画の同意 — 方針が固まったら、施設が看取り介護計画を作成し、家族が同意書に署名します。
  6. 看取り期のケア開始 — 痛みの緩和、口腔ケア、体位変換など、身体的な苦痛を軽減するケアが中心になります。面会の頻度・ルールもこの段階で緩和されることが一般的です。
  7. 看取り — 医師による死亡確認後、死亡診断書が発行されます。
  8. 退所・引き継ぎの手続き — 施設との契約終了手続き、ご遺体の引き取り、市区町村への死亡届の提出(家族の役割)などが行われます。

看取り期を支える多職種の役割

看取り介護は特定の職種だけで完結するものではなく、施設内外の多職種が連携して支えます。それぞれの役割を知っておくと、誰に何を相談すればよいかが分かりやすくなります。

職種 主な役割
医師(配置医・協力医療機関) 回復見込みの診断、痛みの緩和を含む医療的な指示、死亡確認・死亡診断書の発行
看護師 バイタルサインの観察、痛みや呼吸苦の緩和ケア、家族への状態説明、医師との連携
介護職員 体位変換、口腔ケア、清潔保持など日常的な身体介護、本人・家族に寄り添う関わり
生活相談員 家族との窓口、看取り介護計画の説明・同意手続き、死後の事務手続きの案内
管理栄養士 食事量が減った際の栄養面のアドバイス、無理のない食形態への調整
ケアマネジャー ケアプラン全体の調整、本人・家族の意向の集約、施設との橋渡し

「まだ早い」と思っても、早めに話し合っておく理由

家族の心理として「まだ看取りの話をするのは縁起でもない」「元気なうちから考えたくない」と感じるのは自然なことです。しかし、実際に状態が急変してから初めて意思決定を迫られると、冷静な判断が難しくなります。可能であれば、入所時の元気なうちに「本人がどこまでの医療を望むか」について、家族間・本人との間で一度話し合っておくことをおすすめします。これは「事前指示(アドバンス・ケア・プランニング)」と呼ばれる考え方で、多くの施設がケアプラン作成時にヒアリングの機会を設けています。

在宅看取りとの違い

在宅での看取りを選ぶ家族もいますが、24時間体制の見守り、痛みの管理、急変時の対応をすべて家族が担う(または訪問診療・訪問看護と連携しながら担う)必要があり、身体的にも精神的にも大きな負担がかかります。仕事と介護の両立に不安がある方は介護と仕事の両立ガイド(介護離職を防ぐには)もあわせて確認してください。特養での看取りは、看護師・介護職員が交代でケアにあたるため、家族は「そばにいる時間の質」に専念しやすいという違いがあります。どちらが正解ということはなく、本人の希望、家族の状況、利用可能な医療資源によって最適な選択は変わります。

亡くなった後のケア(エンゼルケア)とグリーフケア

医師による死亡確認の後、看護師・介護職員が身体を清め、身支度を整える「エンゼルケア(死後処置)」を行います。これは施設のケアの一環として実施されるのが一般的です。また、大切な家族を亡くした後の遺族の心のケアを「グリーフケア」と呼びます。看取りを経験した家族の中には、喪失感や「あの選択でよかったのか」という迷いを抱える方も少なくありません。施設によっては、退所後も生活相談員が家族の相談に応じたり、遺族向けの会を開いたりする取り組みを行っている場合があります。つらさを一人で抱え込まず、施設の相談員やケアマネジャー、地域包括支援センターに気持ちを話してみることも選択肢の一つです。

よくある質問(FAQ) {#section-faq}

Q1: 看取り介護とは何ですか?延命治療をしないということですか? A: 看取り介護とは、医師が回復の見込みがないと診断した方に対して、本人・家族の意思を尊重しながら、痛みや苦しみを和らげることを中心に、最期までその人らしく過ごせるよう支援するケアです。延命治療を行わないことと同義ではなく、どこまでの医療的処置を望むかは本人・家族の意思決定によって個別に決まります。

Q2: すべての特養で看取りに対応していますか? A: 対応していません。看取り介護加算を算定していない特養や、体制が整っていない特養もあります。入所前・入所後に「看取り指針の有無」「常勤看護師の配置」「24時間連絡体制」を確認する必要があります。

Q3: 「看取り介護加算」を算定している施設かどうか、入所前に確認できますか? A: 確認できます。介護サービス情報公表システムで施設名を検索すると、加算の算定状況が公表されています。見学時に直接「看取り介護加算Ⅰ・Ⅱを算定していますか」と質問するのが最も確実です。

Q4: 看取り期に入ると費用は高くなりますか? A: 看取り介護加算が施設側の介護報酬に上乗せされるため、利用者負担も1割〜3割分だけ増加します。死亡日は加算Ⅰで1,280単位、加算Ⅱで1,580単位が上乗せされ、1割負担なら地域単価にもよりますが概ね1,300円前後の負担増です。

Q5: 看取り期でも面会は自由にできますか? A: 多くの特養では看取り期に入ると面会時間や人数の制限を緩和する運用が一般的です。ただし施設ごとにルールが異なるため、看取り介護計画の説明時に面会方針を確認しておくことをおすすめします。

Q6: 容体が急変したとき、必ず病院に運ばれますか? A: 看取り介護計画に同意している場合、軽度の急変であれば施設内の医師・看護師の判断で対応することが多くなります。ただし本人・家族が病院搬送を希望する場合はいつでも方針を変更できます。

Q7: 看取り介護計画に同意した後、方針を変更できますか? A: できます。看取り介護は一度同意したら後戻りできない契約ではなく、本人の状態や家族の意向の変化に応じて随時見直すことが制度上前提とされています。方針を変えたい場合は遠慮せず施設の看護師・生活相談員に伝えてください。

Q8: 特養で亡くなった後の手続きはどうなりますか? A: 医師による死亡確認・死亡診断書の発行後、施設が家族へ連絡し、退所(契約終了)とご遺体の引き取りの調整を行います。死亡診断書をもとに市区町村へ死亡届を提出するのは家族の役割です。葬儀社の手配は家族が行いますが、施設が提携葬儀社を紹介できる場合もあります。

Q9: 老健やグループホームでも看取りはできますか?特養との違いは? A: 老健、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)でも看取り介護加算は存在し対応可能です。ただし老健は在宅復帰を前提とした施設のため看取り体制の手厚さは施設差が大きく、グループホームは看取り介護加算Ⅰのみで、医療連携の強さは施設ごとに差があります。医療的な管理が必要な場合は介護医療院や特養の医療連携型が候補になります。

Q10: 在宅看取りと特養での看取り、何が違いますか? A: 在宅看取りは住み慣れた自宅で過ごせる一方、家族の身体的・精神的負担が大きく、24時間体制の医療・介護連携を自分たちで整える必要があります。特養での看取りは、看護師・介護職員が交代で対応するため家族の負担は軽減されますが、個室でない場合は環境面の制約があります。

Q11: 看取り介護加算ⅠとⅡの違いは何ですか? A: 加算Ⅰは基本的な看取り体制(常勤看護師1名以上・24時間連絡体制など)を満たす施設が算定します。加算Ⅱは、看取りを行う際に配置医師またはオンコール医と24時間連携できる、より手厚い医療連携体制を整えた施設のみが算定できる上位区分です。死亡日前々日・前日と死亡日の単位数が加算Ⅱのほうが高く設定されています。

Q12: 家族が遠方に住んでいても看取りに立ち会えますか? A: 多くの施設が、看取り期に入った時点で家族への連絡体制を強化し、容体の変化に応じて早めに連絡する運用をしています。遠方の場合は事前に「どの段階で連絡してほしいか」を施設の看護師と相談し、緊急連絡先とその優先順位を共有しておくことが重要です。

まず今日やること {#section-action}

看取りについて考えることは、決して「縁起でもないこと」ではありません。早めに準備しておくことが、いざというときに本人・家族が後悔のない選択をするための助けになります。

アクション1: 入所中・検討中の施設に看取り対応を確認する(15分)

施設の生活相談員に電話し、「看取り介護加算は算定していますか」「看取り指針はありますか」の2点をまず聞いてみてください。回答が明確であるほど、体制が整っている可能性が高いといえます。

特別養護老人ホーム(特養)完全ガイドで施設選びの基本を確認する

アクション2: 本人の希望をメモしておく(15分)

本人が話せる状態であれば、「延命治療についてどう考えているか」「最期はどこで過ごしたいか」を、できれば元気なうちに一度聞いておきましょう。認知症などで本人の意思確認が難しい場合は、これまでの言動や価値観から家族で話し合い、記録に残しておくことが助けになります。

アクション3: 負担限度額認定証の申請状況を確認する(10分)

食費・居住費の軽減が受けられる負担限度額認定証をまだ申請していない場合は、市区町村の介護保険課に確認してください。2026年8月からの基準見直しに伴い、所得段階が変わる可能性もあるため、既に認定を受けている方も更新通知を必ず確認しましょう。

負担限度額認定証の申請方法を詳しく見る

アクション4: 要介護認定・限度額をシミュレーションしておく

まだ要介護認定を受けていない、または区分変更を検討している場合は、要介護認定の受け方ガイド要介護認定シミュレーションを参考に、事前に準備を進めておくとスムーズです。使える制度の全体像は要介護認定シミュレーター制度診断ツールでも確認できます。

アクション5: 家族間で話し合う時間を作る

看取りについての意思決定は、一人の家族だけで抱え込むものではありません。きょうだいや配偶者など、関わる家族が複数いる場合は、事前に次のような項目を話し合っておくと、いざというときの混乱を減らせます。

  • 本人が延命治療についてどう考えているか(聞いたことがあるか)
  • 誰が施設からの連絡を受ける「窓口」になるか
  • 緊急時に連絡すべき家族の優先順位と連絡先
  • 費用面で家族間の負担分担はどうするか
  • 万一のときの葬儀・宗教儀式についての希望

一度にすべてを決める必要はありません。まずは「そういう話し合いの機会を持とう」と声をかけることから始めてみてください。

この記事は2026年7月時点の情報です。 2026年8月には特定入所者介護サービス費(補足給付)の基準見直しが予定されており、費用・制度詳細は変更される場合があります。最新情報は厚生労働省 介護サービス情報公表システムまたは市区町村の介護保険課・地域包括支援センターにお問い合わせください。

一次情報源: 本記事の数値は厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」・介護保険最新情報Vol.1481・介護保険法(第8条第27項)・老人福祉法(第20条の5)と照合しています。

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著者プロフィール

スマくら介護編集部

介護保険制度・高齢者福祉サービスの解説を専門とする編集チームです。厚生労働省・WAM NET・各種自治体公式情報をもとに、介護に初めて直面する方が「今日の一歩を踏み出せる」コンテンツ制作を行っています。本記事はスマくら介護編集部のリサーチに基づき、介護保険法令との整合をAIで照合しています。外部の有資格者による人間監修は順次招聘中であり、本記事には未付与です。医療・法的・財務に関する最終判断は、必ず地域包括支援センター・自治体担当窓口・社会福祉士等の有資格者にご相談ください。